「男たちの旅路」シリーズ(76~82年、NHK)
Work Title | 「男たちの旅路」シリーズ(76~82年、NHK) |
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Phonetic Pronunciation | - |
Period | - |
Author | 山田太一 |
Summary | その場の空気や人の顔色を窺うことなく、言いたいことを歯に衣着せず言えたら、胸がスカッとするのではないか。NHKの土曜ドラマ「山田太一シリーズ・男たちの旅路」はそんな気持ちにさせられる物語だ。1976年から1982年まで、一話完結型のシリーズドラマとして第4部まで制作された。脚本家の名を冠にしたタイトルも当時としては異例だった。本作あたりから「作家性」という言葉が使われ始め、脚本家の地位向上に大きく貢献することになる記念碑的な作品となった。 山田太一はNHKから鶴田浩二主演のドラマの書き下ろし脚本を依頼されたが、当時、NHKと鶴田は絶縁状態にあった。鶴田は出演依頼を一度は蹴った。再度の依頼を受けて、特攻帰りの自身の体験や思いを脚本に投影してくれるならという条件を出した。山田が鶴田の家を訪れたとき、鶴田は特攻隊時代の話をひとしきり熱弁した。それがこの作品のベースになっている。やくざ映画のスターだった鶴田浩二だが、制服が似合いそうだというのでガードマン役が浮上した。山田太一はガードマン社会を舞台に、実際に戦争を体験した中年男と戦争を知らない若者が、ともに働く中で生まれる対立や共感、世代を超えたふれあいを深みのある台詞にのせて描いた。鶴田は完成した脚本を読んで、出演を快諾した。本作への出演を機に、鶴田はNHKの番組や山田脚本のドラマに頻繁に出演するようになる。遺作も山田脚本でNHK「ドラマ人間模様・シャツの店(86年)」であった。 主人公の吉岡晋太郎(鶴田浩二)は戦中派の50歳、警備会社に勤める筋金入りのガードマンだ。特攻隊の生き残りとして、戦後の三十数年を生きてきた。死んでいった戦友たちを思うと、今時のチャラチャラした若者に我慢ならなくなる。腹が立てば黙ってはいない。「若い奴は嫌いだ。俺はおまえたちが嫌いなんだ」などと容赦なく言い放つ。 そんな吉岡司令補のもとに、2人の若者が新人ガードマンとして配属されてきた。柴田竜夫(森田健作)と杉本陽平(水谷豊)である。吉岡と彼らの仕事は自殺の名所になっている高層ビルで、夜間の投身自殺を防ぐこと。ある夜、自殺願望の若い女性・島津悦子(桃井かおり)がビルに忍び込み、吉岡が彼女を救う。 最初は説教臭い吉岡に反発していた竜夫や陽平だが、一つの事件に一緒に立ち向かい、言いたいことを言い合ううち、わだかまりは解けて共感を覚えるようになる。吉岡は彼らに、生と死が背中合わせだった戦時中から今までの自分の体験や思いを語る。若者に一切媚びない吉岡に、若者たちは次第に心惹かれていく。 ドラマは好評で第4部まで続き、最終回スペシャルまで全13話が放送された。裏番組に「8時だヨ!全員集合」(TBS)や「欽ちゃんのドンとやってみよう!」(フジテレビ)など超人気番組があったにもかかわらず、平均視聴率18%と健闘した。第14回ギャラクシー賞選奨、第32回芸術祭大賞、第9回放送文化基金奨励賞などを受賞。 |
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