「それぞれの秋」(73年、TBS
Work Title | 「それぞれの秋」(73年、TBS |
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Phonetic Pronunciation | - |
Period | - |
Author | 山田太一 |
Summary | 1970年から1977年まで、TBS系列で放送された「木下恵介・人間の歌シリーズ」の第12作目。山田太一は企画・監修の木下恵介から「好きなように書いていいよ」と言われ、書きたいことを書きたいように書き、初めて自分の文体を得た気がしたという。本作がその後の「岸辺のアルバム」や「早春スケッチブック」へとつながり、人間の内面を深く見つめる山田太一ドラマを生み出す契機になったと言えるだろう。 書かれたのは1973年、第一次オイルショックと第4次中東戦争勃発の年である。山田はそんな時代背景もにらみながら、のほほんとしたホームドラマに一石を投じ、平凡に見える家庭にも数々の秘密とトラブルの火種が潜んでいることをあぶり出した。 平均的な中流家庭を襲う問題や家族の絆を、大学生の次男の目を通して語っていく。 新島家は長期住宅ローンで建てた家に家族5人で住んでいる。父の清一(小林桂樹)はくたびれた定年間際のサラリーマン。母の麗子(久我美子)は専業主婦で、夫を細やかに気遣いながら3人の子供を育ててきた。長男の茂(林隆三)はベッドのセールスマンで、口を開けば仕事の自慢話ばかりする。次男の稔(小倉一郎)は大学生。あまり出来は良くないが、心の優しい青年だ。ガールフレンドの兄に凄まれると、交際をやめてしまうような気の弱いところがある。末っ子の陽子(高沢順子)は高校2年生だが、稔の目にはまだ中学生のように幼く見える。どこにでもある世間並みの家族だと思っていたのだ。 ある日、稔は悪友・唐木(火野正平)の口車に乗って、電車の中で痴漢を働いてしまう。しかも相手がよりによって不良グループの女学生という不運。その結果、不良グループからリンチを受ける羽目に陥るのだが、そのグループの中にあろうことか妹の陽子がいた。 危ういのは、痴漢行為をした稔や不良グループに入った陽子だけではない。父の清一はなぜか不可解な行動を繰り返す。一方、兄の茂も恋人の妊娠が発覚し、崖っぷち状態になるなど、家族それぞれがトラブルを抱えていた。稔は微力ながら必死に家族を守ろうとするが、穏やかだった新島家に波風が立ち始め、やがて嵐となって吹き荒れる...。 脇役では稔の悪友・唐木役の火野正平、スケバン役の桃井かおりが異彩を放つ。 さらに秀逸なのは、小倉一郎のナレーションだ。このドラマを見た倉本聰はナレーションの使い方に感服し、自作の「前略おふくろ様」で導入することにしたという。 第6回テレビ大賞本賞、優秀個人賞(小林桂樹)、新人賞(火野正平)。第11回ギャラクシー賞、ギャラクシー賞第27回期間選奨(脚本・山田太一)。第14回放送作家協会優秀作品賞、演出者賞(井下靖央)。芸術選奨新人賞(山田太一)などを受賞。 |
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