「新・坊ちゃん」(75~76年、NHK)
Work Title | 「新・坊ちゃん」(75~76年、NHK) |
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Phonetic Pronunciation | - |
Period | - |
Author | 市川森一 |
Summary | 夏目漱石の小説「坊つちやん」をもとに、原作の楽しさ面白さを生かしながら、新たな創作を加えた青春群像劇。20世紀初頭の松山を舞台に、社会への怒りや挫折をエネルギーに変えて、生き生きとパワフルに行動する主人公や仲間たちの姿を映し出す。 日本が新しい国づくりに邁進していた明治時代、東京から四国・松山の旧制中学へ、坊っちゃんこと矢田部(柴俊夫)が新任の数学教師として赴任してくる。そこには坊っちゃんが勝手にあだ名をつけた校長の狸(三国一郎)、教頭の赤シャツ(河原崎長一郎)、後に意気投合する山嵐(西田敏行)、野だいこ(下条アトム)、うらなり(園田裕久)など極めて個性あふれる同僚教師、そしてワンパク盛りの生徒たちがいた。坊っちゃんは生来の無鉄砲で喧嘩っ早い江戸っ子気質全開で、さまざまな騒動を巻き起こす。 坊っちゃん役の柴俊夫は東京・浅草の出身で、まさしく江戸っ子。一本気で正義感の強い主人公を地でいく配役である。柴が主演した「シルバー仮面」(71~72年/TBS系)でも脚本を書いていた市川森一が本作の主役に誘ったという。一方、山嵐役の西田敏行も原作と同じ福島県の出身だ。会津魂をもつ熱血漢の山嵐を演じ、はまり役という声も多く聞かれた。柴と西田は本作で出会い、物語同様に私生活でも親交を深めている。 また、当初マドンナ役を務めていた大原麗子が病気で途中降板し、結城しのぶにバトンタッチした。このほか、原作にない登場人物として、当時の人気アイドル・林寛子が中学の用務員の孫娘・桃役で出演している。 原作小説は素材として短いため、全22回の大半は脚色というより半オリジナルストーリーだ。面白いと歓迎される一方で、近代日本を代表する文豪・夏目漱石を冒涜するものだと、当時の日本文学界の重鎮・石川達三から抗議も受けた。物議を醸したが、大胆に換骨奪胎し脚色の幅を飛躍させたという意味で、テレビドラマの記念碑的作品となった。 たとえば、第15話「西郷いまだ敗死せず」では、西郷隆盛は西南戦争で死んでおらず、松山の奥地に潜んでいるという噂を中心に話が進む。一見、荒唐無稽だが、時代背景からすれば、西郷生存説はまだ根強くあったに違いない。そんな明治という激動の時代の息吹きを肌に感じ、よく知る人々を覗き見るような親近感を抱くドラマだった。その後、西田敏行が大河ドラマ「翔ぶが如く」で西郷隆盛を演じたのも天の采配と言うべきか。 市川森一は自身の作品の中で「好きな一作は?」と問われて、本作を挙げたという。 |
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